こないだ、ルナのベッドの下からヤバいおもちゃ箱を発見して、完全に「むっつりド変態」であることが確定した件の続きを聞いてほしい。 あれ以来、ルナも俺の前で変に取り繕うのをやめたというか、俺がちょっとからかうと耳まで真っ赤にしながらも、正直に答えてくれるようになった。 ただ、相変わらず普段は黒縁メガネの真面目な事務職って感じの清楚な格好をしてるから、そのギャップに俺の脳味噌は常にバグりっぱなしだ。
昨日の夜のこと。 金曜の夜で、ルナの狭いアパートのベッドでふたりでゴロゴロしてた。 ルナは俺の胸に寄りかかりながらスマホをいじってて、俺はぼんやりテレビを見てた。 ふとルナのスマホの画面が視界の端に入ったんだけど、真っ白な背景にびっしり文字が並んでるサイトをスクロールしてた。
ルナ、何読んでんの? 仕事の資料?
俺が何気なく覗き込もうとすると、ルナは「ひゃっ!?」と変な声を出して、バッとスマホの画面を伏せた。
な、なんでもない! ちょっと、ニュース読んでただけ!
明らかに動揺してる。メガネの奥の目が泳ぎまくってるし、顔がみるみる赤くなっていく。 こいつ、絶対ニュースなんか読んでなかっただろ。
ニュース? なんでニュース読むだけでそんな焦ってんの? もしかして……また男とハピメの話とかしてたんじゃないだろうな?
ち、違うよ! ハピメなんか絶対やってない! ほんとに!
じゃあ何見てたの? 見せてよ
だめ! 絶対だめ! ほんとに変なものじゃないから……っ!
ルナはスマホを胸に抱き抱えて、必死に抵抗する。 俺はその様子を見て、ピンときた。 ……こいつ、またエロいこと考えてたな。
俺はわざと低い声を出して、ルナの耳元に顔を近づけた。
……ルナ。この前、隠し事しないって約束したよな? あのピンクの吸うやつ、今から出してもいいんだぞ?
……っ!
おもちゃを引き合いに出すと、ルナはビクゥッと肩を震わせて、涙目になった。
……わかった。言う、言います……だから、おもちゃは出さないで……
ルナは観念したように息を吐き出すと、ギュッと握りしめていたスマホの画面を、俺に少しだけ向けた。
そこには、文字だけのサイトが映っていた。 ただの文字だ。でも、チラッと見えた見出しがヤバかった。 『上司との残業中、デスクの下で……』
……ルナ、これ
……体験談、サイト
ルナの声は消え入りそうだった。 俺は一瞬ポカンとした。
体験談? エロい体験談ってこと?
……うん
お前……こんなの読んでたの?
ルナはコクリと頷いた。 俺は頭の中で状況を整理した。真面目で本を読むのが好きなルナが、夜な夜なスマホで活字のエロ体験談を読み漁っている。 ……なんだそれ、最高かよ。
へえ……ルナって、一人でする時の『おかず』、動画じゃなくて文章派なの?
俺が直球で聞くと、ルナは両手で顔を覆って、ベッドのシーツに顔を押し付けた。
……やめて、そういう言い方しないで……恥ずかしい……っ
恥ずかしくないだろ。俺も男だから動画は見るけど、女の子ってそういうのあんまり見ないイメージあったわ。なんで動画じゃなくて文章なの?
ルナは顔を覆ったまま、モゴモゴと答え始めた。
……動画って、なんか生々しすぎるっていうか……男の人の顔が好みじゃなかったり、変な声出されたりすると、一気に冷めちゃうの
あー、男優の顔がノイズになるってやつか
そう。それに……
ルナは少し顔を上げて、俺のパジャマの袖をぎゅっと掴んだ。
……一番の理由は、音がないから
音?
うん。私、壁の薄いアパートだから……動画だと、イヤホンがもし外れちゃって爆音で喘ぎ声とか出たら、隣の人にバレるかもしれないじゃない? それが怖くて……
なるほどな。確かに文章なら無音だもんな
そう。夜中にベッドの中で、お布団かぶって……ひっそり、誰にもバレずに読めるでしょ。それが、すごく安心するの
ルナの口から「夜中にベッドの中でひっそり」なんてワードが出た瞬間、俺の脳内に、俺がいない夜にひとりでピンクのバイブを当てながらスマホの画面を見つめているルナの姿が鮮明に浮かび上がった。 ヤバい。下半身が熱くなってきた。
それにね
ルナが少しだけ熱を帯びた声で続ける。
文字だけだと、自分の好きなように『妄想』できるの
妄想?
うん。体験談に出てくる男の人を、自分好みのイケメンに脳内で変換したり……最近だと……
最近だと?
……相手の男の人を、〇〇君(俺の名前)に置き換えて、読んだりしてる……
ドカン! と、俺の中で何かが爆発した。
おま……マジで言ってんの?
……うん。この前読んだやつも……彼氏に意地悪されて泣かされる話だったんだけど……〇〇君の顔想像しながら読んでたら……すごく、下の方がジンジンしてきちゃって……」
ルナは自分で言ってて恥ずかしくなったのか、またシーツに顔を埋めた。 俺は理性を総動員して、なんとか平常心を保ちながら話を続けた。
……そ、そうなんだ。でも、体験談ってそんなにいっぱいあるの?
うん! すごくたくさんあるよ。しかも全部無料だし。自分の今の気分に合わせて、『今日は優しいの』とか『今日はちょっと激しくて強引なやつ』とか、シチュエーションで選べるの
なんだろう。ルナのやつ、最初の恥じらいはどこへやら、完全に「体験談サイトのヘビーユーザー」としての顔つきになってきてる。 本好きのオタクが自分の好きなジャンルを語る時特有の早口になってるぞ、これ。
へえ、無料ならいいな。でも、そういうサイトっていろいろあるだろ? ルナはいつもどこ見てんの? オススメとかってあるの?
俺が何気なく聞くと、ルナは少しだけ得意げな顔をした。
……『ヌキガタリ』ってサイト

ヌキガタリ?
うん。私、いろんなサイト見たけど、ここが一番いいの
へえ、何がそんなにいいの?
ルナは体を起こして、メガネをクイッと押し上げた。完全にプレゼンモードに入ってる。
まずね、投稿してる人が本当に一般の人っぽい生々しさがあるの。作り話みたいなプロの小説じゃなくて、『これ絶対に実話でしょ!』って思っちゃうくらい、リアルな感情とか、その時の細かい情景が書いてあるの
ふーん。作り物っぽくないってことか
そう! だから、読んでて『私にもこういうこと起こるかも……』って、感情移入しやすくて。あと……
ルナは急に声を潜めて、俺の耳元に顔を近づけた。
……ヌキガタリって、普通のカップルの話とか、オフィスでの内緒の出来事みたいな、日常に潜んでるエロが多いの。だから……
だから?
……自分が普段生活してる場所と重なって、余計にムラムラしちゃうの……っ
ルナの吐息が耳にかかって、俺はゾクッとした。 この真面目な顔して、頭の中はヌキガタリの妄想でいっぱいなのかよ。
例えばさ
俺は意地悪く聞いた。
今日、俺に見られそうになって焦ってたやつ。あれはヌキガタリのどんな体験談だったの?
ルナの顔が、さっきまでとは比べ物にならないくらい真っ赤に染まった。
……えっと……それは……
「言わないなら、今からそのスマホ奪って履歴全部見るけど?
だめっ! 言う、言います!
ルナは涙目で俺を睨んだあと、蚊の鳴くような声で告白した。
……『普段はおとなしい真面目な彼女が、彼氏におもちゃを使われて、声も出せないくらい狂わされる』……って話
……は?
……っ、だから、ヌキガタリでそういう体験談があって……それを読んでたら、この前の夜のこと思い出しちゃって……それで……
ルナは両手で顔を覆って、小さく震え始めた。
俺は完全に理解した。 ルナは、自分の実体験とヌキガタリの体験談をリンクさせて、ひとりで勝手に発情していたんだ。 俺の隣に座りながら、俺にめちゃくちゃにされる妄想をして、股間を濡らしていた。
ルナ。お前、マジで……最高だな
……やだ、もう、最低……私、頭おかしくなっちゃったのかも……っ
俺はルナのスマホを奪い取って、ベッドの脇に放り投げた。
あ……
スマホなんか見てる場合じゃないだろ。……ルナが今読んでたヌキガタリの話、実写版でやってやるよ
俺はルナの両手首を片手で掴んで、そのままベッドに押し倒した。 メガネが少しずれて、潤んだ瞳が俺を見上げる。
……え、でも、明日仕事……
関係ない。お前がそんなエロいサイト読んで、俺の隣で勝手にムラムラしてるのが悪いんだろ
ひゃっ……! そ、こ……さわらないで……っ
俺がパジャマのズボンの上から股間を少し強めに押し付けると、ルナの腰がビクンッと跳ねた。
こんなに濡らしてんじゃん。……おもちゃ、取ってくるわ
だめぇっ! おもちゃは、やだ……っ、〇〇君のが、いい……っ!
両方使ってやるよ。ヌキガタリの主人公より、激しく狂わせてやる
俺はルナの唇を塞いで、そのままパジャマのボタンを引きちぎる勢いで外した。
……これ以上は、また自粛する。 ただ、ひとつ言えるのは、文字だけの体験談サイトの威力はマジでバカにできないってことだ。 動画みたいに視覚的な情報がない分、女の脳内で勝手に妄想が膨らんで、勝手に感度が上がっていくらしい。
もし、彼女が最近エッチに消極的だったり、もっと変態にさせたいと思ってる奴がいるなら、さりげなく『ヌキガタリ』ってサイトを教えてやってみろ。 「動画は恥ずかしいけど、活字なら……」って読み始めたら最後、ルナみたいに夜な夜な自分の都合のいいように妄想して、勝手に濡れる体質になること請け合いだ。
俺は今から、疲れ果てて眠っているルナの横で、昨日の夜彼女が読んでいたというヌキガタリの体験談をこっそり読んでくる。 次にどんなシチュエーションで攻めるか、俺もそのサイトでおかずを探させてもらうわ。
